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能楽トリビアTrivia

Question157 本物の楽器が登場する曲は?(2019年9月4日追加)

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能で楽器といえば鼓や笛(能管)など囃子方の使う楽器が有名です。しかし、これらはいわば効果音を担当するもので、劇の内容には直接関与しません。一方、楽器が劇中で役割をもつ演目として、琵琶が登場する「経正(経政)」「蝉丸」「絃上(玄象)」、笛(龍笛)が登場する「清経」「敦盛」などがあります。なかでもユニークなのが「絃上(玄象)」です。

平安時代、琵琶の名手であった藤原師長ふじわらのもろながが腕前を磨くため唐へ赴こうとします。ところが道中の須磨の浦で出会った老人の弾く琵琶の音色に打たれ、日本にとどまるよう決意するというストーリー。老人の正体は村上天皇で、絃上(玄象)とは天皇の所有する琵琶の名です。

「経正(経政)」や「清経」では扇を楽器に見立てるのに対し、「絃上(玄象)」は本物に擬して作られた琵琶の小道具、作り物を使う点で異なります。また実物の琵琶を使って音を奏でる場合もあります。ただし、それは金剛流に伝わる「楽入」という小書こがき(特殊演出のこと)の場合のみ。滅多に上演されません。

なお、この場合の琵琶は「楽琵琶」といって、雅楽に使われる大型のもの。薩摩琵琶や筑前琵琶のように垂直に立てて構えるのではなく、平家琵琶と同じく横に倒した構えで演奏します。「絃上 楽入」の際は、希少な楽琵琶をどうやって調達するかも演者の悩み所とか。

このほか、鉦鼓を鳴らす曲「隅田川(角田川)」もあります。珍しい上演を眼にできたらラッキーと言えそうです。


イラスト:坂木浩子
今までのトリビア

「能楽トリビア」は作成にあたってこちらの文献を参考にしています。


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