近年はさまざまな機会で能の舞台が開催されることが多くなりました。中でも、独特な開放感がある薪能は、イベント性も高く、敷居が低いこともあって人気があり、開催の機会も増えています。しかし、主な開催が、暖かな季節の夕方ということもあり、天候とのかねあいが難しい舞台でもあります。
規模の大きな薪能の場合は、雨天順延、もしくは中止となることもあります。中・小規模の公演では、屋内に別の場所を確保して、雨天の時はそこを代替会場にすることもあります。薪能ではなく、屋内の「ろうそく能」にすることも。その場合は、雨天でなければ観られなかった舞台とも言えるので、また違った趣を楽しめるでしょう。
演能の途中から空模様が怪しくなることもありますが、こういうケースは演者の立場からも、特に避けたい状況です。その場合は、空の様子を見ながら、影響の少ない地謡の一部を抜いて短縮する、一時中断してから再開するなど、最後まで演じるように策を尽くします。それでも無理な場合は……。遭遇したくないですね。