視界がきかず、呼吸の自由も奪われる能面をかけ、重い装束を着けて、舞い謡う能楽師。40歳でも若手といわれ、一般社会では定年の60歳をはるかに超えても、現役バリバリに活躍する能楽師はごく普通に存在します。それは幼少からの稽古で、鍛錬してきた賜物といえます。
まっすぐな姿勢、すり足に代表されるゆっくりと安定した動きで、大腰筋など身体の深層筋を活性化させ、バランスを整えたり、背筋を伸ばしてお腹から声を出す謡で、リズミカルな腹式呼吸を繰り返したり、といった身体活動が、自然に頑健なからだづくりに貢献しているのでしょう。
能楽師ばかりではなく、仕舞や謡を長く習っている人に健康・長寿を謳歌している方も数多く見られます。素人の会でも、90歳を超えてなお、矍鑠と動き、朗々と謡う長老格の人にめぐり合うのは珍しくありません。
健康を維持するため、激しいスポーツやエクササイズのかわりに能の稽古に通う。最近ではそんな人たちも増えているようです。