一般的に、音楽は幼少の頃から取り組むほど上達が早いといいますが、能楽の囃子方の笛(能管)の場合、あまり小さいうちから稽古をすることはないようです。能管は、7つの指孔(ゆびあな)を抑えて低音域から高音域までの音を作るため、まだ十分に成長しきらない、手が小さな未就学児のうちからの稽古は難しいのです。
笛方は、「笛は一生に3本持つ」といわれます。これは、年齢とともに変化する体に合わせた笛を使う必要があるところからきているようです。稽古を始める10歳前後の頃、そして30歳、60歳の頃に替えるそうです。人によっては、もっと多くの笛を使い分けることもあります。
能管は、調律されて皆が皆同じ音階を奏でる楽器ではなく、1本1本指孔の間隔にも差があり、音程も1本1本で異なるという個性的な楽器です。奏者の技量だけでなく、体の変化、笛そのものの特性、それらが重なり合って、その舞台のみの独特な音色、緊張感をめぐらす旋律が生み出されるのです。