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能楽トリビアTrivia

Question68 能の基音とは?(2009年8月21日追加)

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能の舞台は、楽器の演奏や謡といった一種の音楽的要素で構成されているのですが、実は3つの打楽器(小鼓、大鼓、太鼓)と笛からなる演奏では、どれも基音というものがありません。たとえば旋律楽器の笛にしても、一管ごとに出る音の高さや諧調に違いがあります。

舞台上で基音を作るのは謡です。しかしこれも地頭をはじめとする地謡方の地声がもとになりますから、西洋の絶対音階に合わせた基音ではなく、その人、その時に応じて異なります。現在の謡の声の出し方には「ヨワ吟」と「ツヨ吟」とがあります。「ヨワ吟」は「柔吟(じゅうぎん)」とも呼ばれ、上・中・下の3音を基本として旋律的に謡うもので、能本来の謡い方といわれます。先に述べたように、西洋音楽の声楽では絶対的な基音を取って歌いますが、謡いの場合は旋律的なヨワ吟でも、その時、その人の謡の声の基音に沿い、相対的に音階が並びます。

「ツヨ吟」は「剛吟」とも呼ばれ、江戸の終わりから明治にかけて現在の形になったと言われています。力強い息づかいで気迫を込めて謡うスタイルが特徴です。ヨワ吟とツヨ吟を組み合わせ、哀切、勇壮、優美、驚愕、颯爽といったあまたのイメージをたくみにきめ細かく舞台上で表現できるのです。


イラスト:坂木浩子
今までのトリビア

「能楽トリビア」は作成にあたってこちらの文献を参考にしています。


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