装束の手入れについては、能や狂言の各家で細かい部分が違っており、また、演者の家と博物館・美術館でも対応が大きく異なります。
演者が所蔵する装束の手入れの基本は、使ったら陰干しをして汗を飛ばし、きれいに畳んで畳紙などに入れ、桐の箪笥など、防虫・防湿効果の高い保存容器で保存します。大きな家では装束蔵という蔵で保管しているところもあります。
洗い張りやクリーニングに出したりすることはありません(長年の汗や脂が染み込んでいるということです)。年に一回は虫干しをして風を通し、ほころびなどがあれば繕いの手を入れます。
狂言の装束は肩衣・長袴・素袍など、麻のものが多く、麻の装束は「敷き伸し(しきのし)」といって装束全体に霧を吹き、きれいに畳んで茣蓙(ござ)ではさみ、上から踏むと皺がきれいに伸びます。それを広げて湿気を飛ばし、乾燥したところで畳み直すと生地の糊が戻って見違えるようになります。