日本語ではかつて、文中の「がぎぐげご」を、濁音である子音の発音時に鼻に抜く「鼻濁音」として発声する仕方がスタンダードとされていました。「が行鼻音」とも呼ばれます。
歌手やアナウンサーなど、発声を重視する仕事では、鼻濁音の発声は「美しい」「正しい」日本語として必須のものとされているようです。文中の「がぎぐげご」の強さを耳障りと感じ、それを和らげる発声方法であるという理由からと見られています。身近な例では、歌謡曲の世界、特に演歌では氷川きよしやジェロなども、しっかりと鼻濁音を発声していることが聴き取れます。
鼻濁音は、関西より西の地域や、北陸の一部地域などの方言では、ほとんど使用されてきませんでした。また昨今では、「聞きづらい」というような理由からでしょうか、日常会話で使われなくなってきています。
さて、能の世界では、謡の練習の基本として、これら鼻濁音や促音の「っ」の発音の仕方など、発声の大切さが強調されます。「げにげに」のような重ね言葉で、文頭は鼻に抜けない濁音にして、二番目の「げ」を鼻濁音にする、というような場合もありますが、多くの場合で鼻濁音が使われますから、謡の上達には、鼻濁音の使いこなしが必須です。