肥後国・岩戸に住む僧が、毎日水を運んで御供えする老女に名を尋ねます。罪を滅ぼしてほしいと僧に語る老女は、太宰府で檜垣をしつらえた家に住んでいた
所の者の勧めもあって、僧は女が老いて住んだという白河の跡まで弔いにやってきます。すると深い霧の中でほのかに灯がともる庵に先ほどの女がいて、世の無常や地獄での苦しみを語り、老い衰えた自身の境遇を嘆きます。藤原興範とのやりとりを思い出して白拍子の舞を舞うと、老女は成仏を願って消えていくのでした。
本作は「関寺小町」、「姥捨」とともに『三老女』の一つであり(金剛流の『三老女』は「関寺小町」「鸚鵡小町」「卒都婆小町」)、最高の秘曲とされています。現行曲としては「卒都婆小町」に次いで古い老女物とされています。
若き頃、美貌を持って舞の評判も高く、家に檜垣をしつらえて優雅に暮らしていた遊女としての自身の姿が老女の口から語られますが、舞台上の老女には華やかだった姿は見る影もなく、老い衰えた女の悲しみが立ち現れます。
全体に落ち着いたもの寂しい曲ですが、余計なものが削ぎ落され、世阿弥が幽玄の極致として説いており、重く扱われている作品です。
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