漢の時代の中国、武帝の宮殿である承華殿の上を三本足の青い鳥が飛びまわっています。
これを陰陽博士に占わせたところ、皇帝にとって吉兆であるとの口上を官人が述べます。
七夕祭の日、武帝が音楽の御遊を催していると、老翁が若い男を連れて参内し、青い鳥は西王母が訪れる前兆であると告げます。さらに老翁は、不老不死の薬にもなるという、西王母が持つ三千年に一度実を結ぶ桃の実について語ると、自分が東方朔であることを明かし、西王母を連れて再び参内することを告げて消えます。
仙人や桃の精が現れた後、西王母の桃を食して九千歳にもなった東方朔が皇帝を訪れます。続いて西王母が色の美しい竜に乗って現れ、皇帝に桃の実を献上します。喜んだ皇帝が管弦の曲を演奏させると、東方朔と西王母は舞を舞います。陽が西に傾く頃になると、東方朔と西王母は宮殿を去り、天上へと消え去るのでした。
本作は、金春禅竹の孫である金春禅鳳が作ったとされる脇能で、観世流と金春流の現行曲ではあるものの上演の稀な作品です。能には中国の神仙思想に基づいた作品がいくつかあり、本曲に題材が近い「西王母」などの曲もありますが、「東方朔」は西王母伝説に仏教説話も合わせた、長寿を寿ぐ祝言性の高い作品となっています。
神仙であるシテ・東方朔とツレ・西王母による「楽」の相舞(初段のみ相舞で、あとはシテ一人で舞う演出もあります)、ワキの「真ノ来序」での登場、アイの活躍など異色の脇能と言えます。豪勢な装束、引立大宮の作り物の効果的な使用もみどころで、縁起の良い作風を感じられます。
演目STORY PAPERの著作権はthe能ドットコムが保有しています。個人として使用することは問題ありませんが、プリントした演目STORY PAPERを無断で配布したり、出版することは著作権法によって禁止されています。詳しいことはクレジットおよび免責事項のページをご確認ください。