都の女は、夫を後妻に奪われた恨みと嫉妬に燃えていた。遠い闇路の鞍馬川を渡り、夜ごとの丑の刻、貴船の宮に詣でる。 橋岡久馬 女に、貴船の社人は神託の夢の告げを語った。赤い衣を着、顔を赤く塗り、鉄輪の三つ足に火を入れて頭に戴けば、願いが叶うと。 藤波重満 その願いとは、鬼になって恨みをはらすこと。神託に心を傾けるそばから、みるみる女の美しい黒髪は逆立ち、様子が変わった。 浦田保利 陰陽師、安倍晴明は悪夢に悩む夫に会い、前妻の烈しい恨みを知る。呪いの死が迫る夫と後妻を救うべく、身代わりを立てて祈る。 鏑木岑男 激しい風雨、雷鳴、稲妻を先触れに、現れたのは、怨みの悪鬼と化した女。蝋燭の炎が盛る鉄輪を載せた姿に、身の毛もよだつ。 藤波重満 鬼女は、夫の枕辺と見た祈祷棚に乗り込む。身代わりの形代(かたしろ)に、捨てられた恨みの炎の言葉を吐きかけた。 高橋汎 後妻の身代わりの髪に手を絡め、思い知れと打ち据える。禍々しいその姿も祈祷に追われて消えるが、時機を待つ、と声は残った。 浦田保利、宝生閑 今は、何ごともないかのような貴船の宮。 [一時停止中。画像クリックで再開します]
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写真:森田拾史郎
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