秋の京都。嵯峨野を訪れた旅僧は、かつて伊勢斎宮の潔斎社であった野の宮に参る。 鏑木岑男 榊を手にした女が現れる。今日、長月七日は昔を思う特別な日、神事を行うので、帰られよ、と僧を急き立てた。 後藤得三 昔を思うとは? 僧の問いに女は、この日、野の宮にいた六条御息所を、光源氏が訪ねた謂れを語り、感に堪えない様子を見せる。 野村四郎 女は、別れにつきまとわれてきた御息所の生涯を語る。寂しさ、懐かしさ、恨めしさ……尽きせぬ情を表して。 野村四郎 唯の人ではなかろう。僧の見立ては当った。女は、自分は御息所であると告白し、夕月のかすかに木洩れる鳥居に隠れて、消え失せた。 津村礼次郎 夜半、僧の前に現れたのは御息所の霊。賀茂祭の車争いで辱しめを受け、心に残る妄執を訴える。 富山礼子 昔よ還れ。思いを込めて舞う。 豊島訓三 小柴垣の露を払う。訪れてきた光源氏との逢瀬は、もはや遠い昔。 南條秀雄 松虫の声響き、凄まじい風の吹く野の宮に、懐かしさは極まっていく。 桜間金太郎 神聖な宮にあっても、高貴の人であっても、妄執は絡みつく。 桃園蹊子 鳥居の内へ、外へと踏み迷う御息所は、火宅(迷妄の世)の門を出られたのか。 松本恵雄 [一時停止中。画像クリックで再開します]
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写真:森田拾史郎
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