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演目事典

野守のもり


「能之図」(下)能 野守
国立能楽堂提供:「能之図」(下)能 野守

あらすじ
出羽の国・羽黒山の山伏が、大峯葛城かづらきへ向かう途中に大和の国・春日の里に着きます。名所を尋ねようと人を待っていると、野の番をしている野守の老人がやってきます。山伏が池について野守に尋ねると、その池が「野守の鏡」であることを教えます。野守の鏡とは、野守を映すものであると共に、鬼神が持っていた鏡であり、昔この野に住んでいた鬼が、昼は人の姿で野を守り、夜は野にある塚に入って住んでいたと野守は語ります。さらに山伏は、「はし鷹の野守の鏡」と和歌に詠まれたのもこの水についてのことなのか尋ね、野守はそのいわれについて語ります。山伏は野守の鏡を見たいと野守に言いますが、鬼の持つ鏡は恐ろしいものであるから、この水鏡を見るようにと言い置いて、野守は塚の中へと消えていきます。

里人から野守の鏡の由来などを聞いた山伏は、塚の前で祈祷します。すると、鬼神が鏡を持って現われ、四方八方、天界から地獄まで、様々なものを鏡に映し出します。やがて鬼神は大地を踏み破って、奈落の底へと入っていくのでした。

みどころ
本作は、『新古今和歌集』や歌学書にある和歌「はし鷹の野守の鏡得てしがな思ひ思はずよそながら見む」という和歌に構想を得て世阿弥が作った作品とされています。

前場では、野守の鏡などに関する伝説や故事がうまく取り入れられ、池の水を何事をも映す鏡に見立てるなど、野守の老人の語りの中に情緒が溢れています。後場では鬼が登場しますが、世阿弥は、人間の執心や怨霊が変化した「砕動風」の鬼と、自然の中にある純然たる存在である「力動風」の鬼の二種類に鬼を分類し、後者には良い評価を与えていません。本作に出てくる鬼は「力動風」の鬼ではありますが、風情が感じられるように工夫が凝らしてあります。

前場の雅味を持つ尉の語りと、後半の力強い鬼神の舞、対照的でありながらも、一貫した芸術性を持って物語は展開していきます。


演目STORY PAPER:野守

演目ストーリーの現代語訳、あらすじ、みどころなどをPDFで公開しています。能の公演にお出かけの際は、ぜひプリントアウトしてご活用ください。

野守PDF見本
the能ドットコムの「野守」現代語訳、あらすじ、みどころは、作成にあたって主に次の文献を参照しています。書名をクリックするとリンク先で購入することができます。
『謡曲大観(第4巻)』佐成謙太郎 著 明治書院
『解註・謡曲全集(第5巻)』野上豊一郎 著 中央公論社
『能楽ハンドブック』戸井田道三 監修・小林保治 編 三省堂
『能・狂言事典』西野春雄・羽田昶 編集委員 平凡社
『能楽手帖』権藤芳一著 駸々堂
各流謡本

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