自然居士という若い説経師が、京都・雲居寺(うんごじ/うんこじ)に人を集めて、七日間の説法を行っていました。その最終日、一人の孤児の女の子(少年)が、美しい着物を携えて現れます。女児(少年)は持参した着物を供養の品として、亡き両親を弔ってほしいと、自然居士に申し出ます。その健気な心に、居士も聴衆も涙します。
ところが、その女児(少年)は、東国から来た人商人にわが身を売って、着物を調達していました。女児(少年)は、追ってきた人商人に連れ去られてしまいます。そのことを知った自然居士は、女児(少年)を助けようと人商人一行を追いかけ、彼らが琵琶湖のほとりで舟を出そうとするところに間に合います。自然居士は舟を引き留めて乗り込み、女児(少年)を解放しないなら、自分も人商人と子どもについていくと決意を述べます。舟から下りなければ、殺してやろうかと言う人商人の脅しにも負けず、自然居士は、決して下りようとはしません。
仏法に仕える自然居士に、手を出すことのできない人商人は、しぶしぶ女児(少年)の解放を決めます。そして募る不満を晴らすため、自然居士に舞を舞わせ、辱めを与えようと考え、女児(少年)の解放の条件にしました。人商人のたくらみを知りつつも、自然居士は彼らの求めに応じて、さまざまな舞を惜しみなく見せます。そして無事に女児(少年)を解放させ、一緒に都へと帰るのでした。
自然居士が高座で説法を始める場面、亡き両親の供養を願い出た女児(少年)の優しい心を描く場面、人商人が女児(少年)を荒々しく連れ去る場面、自然居士が体を張って人商人と渡り合う場面、自然居士が人商人の要求のままに次々と舞を見せる場面……。さまざまに場面転換しながら、見せ場が連続していくエンターテインメント性の高さが特徴的です。
そのなかで、身を捨てて人を救おうとする主人公、若き自然居士の頼もしい姿がくっきりと浮かび上がってきます。
問答を楽しみ、謡を楽しみ、舞を楽しんだ後、正義は勝つという揺るぎない心情を得て、爽快な気持ちを覚えることができます。一貫して流れる温かい情感に浸りつつ、物語に入り込んで、じっくりとお楽しみください。
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