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第1部 修行のあゆみ 第3部 能面工房にて髙津さんに、実際の作業場で、能面制作のプロセスをお見せいただきました。
能面の素材狂いの少ない檜を素材に、7寸×5寸の板(厚みは2寸5分、3寸)の形に切り出されたものが使われる。(1寸は約3cm。近年は22cm×15cm×7.5cmなどメートル法で切り取った材がよく販売されている) 髙津さんのコメント:能面は、5ミリでも縮んだら、表情がえらく落ちこんでしまいます。檜は反りの出にくい安定した材であり、油脂が適度に含まれて耐久性もあるので、能面には最適です。油脂があるということは、後にシミとなって出てくることもありますから、場合によっては油抜きをしなければなりません。ただ、油脂によるシミの出具合が絶妙で、時代感が出たり、名品になったりする場合もありますから面白いところです。檜のなかでも尾州檜は最高の素材です。 能面制作のプロセス大まかには、「彫り」と「彩色」のふたつのプロセスがあり、この間に木地の仕上げや裏面の漆塗り、油抜きなどのプロセスも入ってくる。 彫り 髙津さんのコメント:能面には、何百年も伝わってきた形式があり、寸法も決まっています。それに基づいた素材をもとに、相対的な能面の輪郭を書き込んでいきます。それから彫る、つまり面を打っていくのですが、実際の打ち方は、人によって方法論が違ってくるんですよ。能面師一人ひとりが自分に合った方法で、行っています。いきなり側面だけ取ったり、最後にいらないところを切っていく方法もあります。なかなか言葉で表現するのは、難しいですね。
彩色 髙津さんのコメント:彩色はとても時間のかかる工程です。塗っては乾かし、の工程を何度も繰り返した後に中塗りをして、さらに上塗りします。何度も塗ることのよって、表情の深みが出てくるのです。面によって色は微妙に調合して作っていきます。そのさじ加減で、雰囲気を変えていくこともあります。曲趣によって沈んだ白がいい、赤みがほしい、といったことに配慮していきます。 また特に最後の、目の辺りなどに墨を入れたりするときの筆づかいには、集中した作業が求められ、気を使います。失敗したら下塗りからやり直しですからね。
(インタビュー:2011年1月) 2011年11月2日、髙津紘一さんが亡くなられました。謹んでご冥福をお祈りいたします。 |免責事項|お問い合わせ|リンク許可|運営会社|
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