わが子をさらわれ、物狂いとなった都の女は、漂い巡り、その果てに隅田川の岸辺へたどり着く。 坂井音重、他 渡船を請えば、狂乱の様子を見せよと強いる渡し守。狂女は「都鳥」の歌で応え、わが子への切なる想いを伝える。 津村礼次郎 その優美さに渡し守も感じ入り、狂女は無事に、船中へ身を置いたのだが…… 観世榮夫、森常好 渡し守の語る痛ましい出来事を耳にして、頭は自然に垂れ、目頭は熱く。 観世榮夫、森常好、宝生閑 さらわれた子の命日は今日。それはわが子、梅若丸。 宝生欣哉、岡田麗史 ただ、はらはらと涙。 関根祥人 どうか掘り返して。もう一度、わが子に逢わせて。墓所の土に手をかける母。 岡田麗史 嘆きはとまらない。 観世銕之丞 母の弔いこそ子のためと、人々に励まされ、鉦鼓を携え唱える声は、川風とともに。南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏。 岡田麗史 なむあみだぶつ。梅若丸の声に伸ばした母の手は、無情にもまぼろしをすり抜けていく。 橋岡久馬、加賀山如芳 金森良充、今井泰男 [一時停止中。画像クリックで再開します]
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写真:森田拾史郎
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