諸国を巡る僧が、陸奥国(今の青森県)外の浜(そとのはま、外ヶ浜ともいう)へ行く途中、越中国(今の富山県)立山に立ち寄ります。そこに一人の老人が現れ、僧に頼みごとをしました。その老人は実は、昨年亡くなった外ヶ浜の猟師の亡霊でした。頼みごととは、外の浜に着いたら、自分の妻と子の家へ行き、簑笠を手向けて弔って欲しいというものでした。突然の依頼に驚いた僧は、いいかげんなことはできないと返答します。すると老人は、これを証拠にといい、着ていた着物の片袖をほどいて渡し、消えていきました。
僧は外の浜に着き、猟師の妻子の家を訪ねます。不思議にも、その家にあった猟師の着物には片袖がなく、僧の持参した袖がぴったりと合いました。簑笠を手向け、僧が猟師を弔っていると、猟師の亡霊が現れます。亡霊は生前、善知鳥をはじめ、鳥獣を捕獲し、殺し続けた罪により、苦しんでいることを明らかにします。そして、地獄で化鳥に変じた善知鳥から、責め苦を与えられる様子を見せ、僧に助けてくれと訴えて、消え失せていきました。
生きることにまつわる哀しさを、陰影深く描き出した、凄惨な曲です。曲名の善知鳥とは、鳥の名前です。親鳥が「うとう」と鳴き、子鳥が「やすかた」と鳴くように聞こえるといわれます。主人公の猟師は、この性質を利用して、鳴きまねで善知鳥を捕獲する猟を行っていました。残酷な猟で夥しい殺生を行ったことが、深い罪であり、地獄へ堕ちることになりました。しかし、そんな残酷な猟を生業としなければ、家族を養うこともできなかったでしょう。生きるために、生き物の命を奪い去らねばならない人間の悲哀。研ぎ澄まされた動きと腹の据わった謡でそれをくっきりと描き出す。能の表現力の凄みを感じます。最後のシーン、地獄の描写は忘れられません。
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