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能楽トリビアTrivia

Question158 改元の時だけに演じられる「大典」とは?(2019年9月24日追加)

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2019年、皇位継承により平成から令和への改元があり、新しい時代が始まりました。さて、この改元の時に上演されるという能があります。「 大典たいてん」という名の、観世流の新作能です。大正天皇の即位を祝して創作された祝言物の曲で、ドイツ文学者・藤代禎輔が詞章を担当し、二十四世観世流宗家の観世元滋(左近)が節付けを行いました。初演は1915(大正4)年でした。

「大典」とはもともと、重大な儀式の意で、天皇即位にかかる皇室儀礼「即位の礼」を「御大典」とも称します。能「大典」は、この御大典にちなんだ内容になっています。それは、新天皇の即位式大典の奉告祭が、京都の平安神宮で行われた際に、神前に詣でて奉告を行った勅使(ワキ)の前に、奇瑞とともに天女(ツレ)が現れて天女の舞を舞います。やがて天津神あまつかみ(シテ)が姿を見せて、明治天皇の徳を讃えて神舞を舞い、新しい御代を寿ぐというもの。シテの面は「高砂」「弓八幡」の後シテと同じく「三日月」で、黒頭に菊花をかざした輪冠を戴き、厚板を着附に着て、袷狩衣をまとい、半切を穿くという男神の装束となっています。その天津神が颯爽と神舞を舞い、御代を寿ぐと、吉兆のシンボルである鳳凰や丹頂鶴に加え、迦陵嚬伽かりょうびんが(仏教で極楽浄土にすむという美声の鳥)も現れるという、めでたさに満ちた一曲となっています。

改元(5月)、即位の礼(10月)と打ち続く2019年からしばらくの間は、「大典」が演じられる稀有な機会。7月には、1990(平成2)年の上演(於:熱田神宮)以来、30年ぶりに横浜能楽堂で九世片山九郎右衛門のシテにより、上演されました。このときは法政大学名誉教授・西野春雄氏が監修し、物語の舞台を平安神宮から伊勢神宮に移すなど、現代に合った内容に変更しています。

また「大典」を改作した「平安」という曲もあります。1961(昭和36)年、 “即位”ではなく“国の安寧、繁栄”を祈り舞う内容で、平安神宮にて上演されました。「平安」はその内容から上演機会に縛られません。2019年5月の京都薪能でも上演されましたが、こちらも注目されます。


イラスト:坂木浩子
今までのトリビア

「能楽トリビア」は作成にあたってこちらの文献を参考にしています。


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